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アメリカ在住の日本人が綴る、学んだ英語、出会った言葉、日々の疑問など

ユタ州のモノリス、アンチが撤去 後味の悪い騒動はSNS社会のせい?

「これが砂漠にゴミを置いてっちゃいけない理由だよ。」
彼らのうちの一人が、モノリスが砂漠を汚染する目障りなものと考えていることを示唆しつつ言った。

“This is why you don’t leave trash in the desert,” one of them said, suggesting that he viewed the monolith as an eyesore, a pollutant to the landscape.
(From New York Times "Earthlings, It Seems, Not Aliens, Removed the Utah Monolith")

 世界をつかの間楽しませたユタ州の通称「モノリス」。
 突如世界に出現して、あっという間に消えてしまいました。
 これが『2001年宇宙の旅』だったら、時空を超えた思わぬ場所にまた神のように鎮座して人類を驚愕させるはずなのですが、実際にはもちろんそうはいかず、あまり夢の無い展開になっています。

 モノリス自体もそれに関して起こったことも、詳しく知ってしまうとなんとなく興ざめ・・・。

 以下の記事は今のところNYタイムズ紙のスクープ。(フリーランサーの女性記者がタイムズに持ち込んだネタだったらしく、その記者が「私の初めてのスクープ、是非皆さん読んで下さい」とTwitterで嬉しそうでした。よかったね!)

Utah Monolith Removed by Four Men, Photographer Says - The New York Times

 まだまだ新たな展開がありそうですが、まとめるとこんな感じ。

 11月27日の夜、月下のモノリスの美しい写真をドローンを使って撮影しようとしていた写真家とその友人。その二人の前に、突然砂漠の渓谷から男性四人がばらばらと道具を持って現れ、まるでそれが彼らの任務であるかのように迷わずモノリスを根元から倒し、ばらばらに壊して荷車に乗せて運んで行った。このブログ記事の冒頭に引用した台詞を作業中に言いながら。
 全てはこれを証言した写真家と友人の目の前でものの10分~15分で全て終わってしまった。口をはさんだりできる雰囲気ではなく、男性四人ともめるのが怖くて止められなかったとのこと。
 写真家のほうは撮影したら彼らが怒るだろうと撮影を控えたが、その友人のほうは携帯でモノリスを倒したグループをこっそり撮った。(NYタイムズの記事には写真が出ています。暗くてぶれているけど)
 写真に写った倒されたモノリスの中身は空洞。ベニヤ合板に金属のシートを張って作ったものだということが判明。全然モノリス(一つの物質で均一に作られていなければいけない)じゃない。

 そしてこの男性四人組グループのうち一人がFacebookで「自分たちがやった」とポスト
 モノリスから一番近い市街地Moabに住む34歳男性で、この人は過去に目立つことを目的に危険なことや非常識な行為をして有罪になり、現在も国有林への立ち入り禁止処分を受けている人。

 この後、撤去グループのもう一人の男性もNYタイムズにコメント。その人は明確に、「自然と守るため」と撤去の理由を説明。「ネットで騒がれたせいで、皆が押しかけた」、それが貴重な自然資源を脅かすと考えたと主張。 

 まあ、今はこんなところです。まだ展開がありそうですが。

 撤去した人はだれか分かった感じですが、建てたのは彼らではないとのこと。そして前回の当ブログの記事にも登場した「故ジョン・マクラッケン作だ」と主張していた画廊のオーナーも倒されたモノリスのあまりにずさんなつくりを見て、その見解を撤回。最初から「ジョン・マクラッケンの作りにしちゃ粗すぎる」と断言していた同僚やご友人はさすがですね。ということで、誰が作って設置したのかはまだ謎です。
blog.writedreamlive.info


 地域の保安局は、「モノリスを建てた人が誰かは捜査しない」と言ったり、撤去騒動の犯人捜査に関しても、こんな楽しい「この顔にピンと来たら通報して下さい」ポスターを作ったり、罪に問わない姿勢だったのに、一転、撤去したグループを捜査する方針で行くことにしたらしい。

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保安局のFacebookポストより

 
 撤去に関しては、賛否両論。だいたいこんな感じ。

1)携帯の電波も入らず、何かあったらレスキューが行くしかない場所に人や車が押しかけ、ゴミの放置もあったと管理局が報告している。だから、モノリスは撤去されてよかった。

2)いくらクールなアート作品でも、貴重な自然の中に設置しちゃだめ。こうなって当然。

3)ミステリーをミステリーのまま楽しめない世の中で虚しいな。

4)石油とか天然ガスのためにもっと貴重な自然とか先住民の
生活とか破壊しまくってるじゃないの、モノリスだけ目の敵にしなくても。

5)短い間だったけれど、暗い2020年にみんなを楽しませてくれたのに。残念。

 どれも正しいんだけど、私の気持ちは5に近いですかね。

 この土地を管理しているBLM Utah(ブラック・ライブズ・マターのユタ支局・・・ではなく、Bureau of Land Management’s Utah office)が、モノリスを発見後もすぐ撤去せず、正確な位置情報無しで公表したのは、皆に謎を楽しんでもらいたいという意図だったと思うのです。当初のコメントも、「どの星の生物でも当局の土地に許可なしで建造物を作るのは違法です」というちょっとふざけた(?)ものだったじゃないですか。地域の保安局までそれに乗っかってふざけた指名手配ポスター作ったり、暗い話題が多い中で、お役所もちょっとみんなの気分転換になるようなことをしようというノリだったはず。

 でも悲しいかな時代はSNS社会だし、みんな電話にいいカメラ持っているし、何か珍しいもの美しいものはそのものをそのまま楽しむのではなく、「それを使ってどう目立つか」「どれだけ世間の注目を集められるか」でしか考えられなくなっている
 賭けてもいい、モノリスに写真やビデオを撮りに行った人は、そこに行くことは違法行為なのに自慢気に自分のSNSアカウントに画像や動画をアップしているはず。いい写真を撮って、自分だけで楽しんでいる人なんて多分ゼロでしょう。
 みんな目立ちたい。
 SNSでフォローされたい。拡散されたい。Likeもらいたい。
 そこに価値を置き過ぎたせいで、ネタ元や楽しいことを失ってしまったというのが今回の騒動かなあと思います。お役所の、大衆の善良さを信じた良い意図を汲まず台無しにしていますよね。

 私だって人のこと責められないけど・・・。
 何を見てもすぐ「写真撮らなくちゃ」って思ってしまうし。私の場合はほとんどそれらを一人で眺めてにやにやしたり家族とシェアしたりするだけだけど、それでも、今この瞬間に観ているものや体験していることを純粋に楽しんだのって最後はいつだっただろう、とふと思うことがある。

 みんながもっと、BLMの言うことを聞いて現地に行くのを控えてくれれば。BLMが発表した写真で満足してくれれば。目立ちたがり屋が壊しにいくようなことも無かったかもしれない。本当に残念。

 このモノリスは約5年の間、誰にも見つからず砂漠の渓谷で発見を待っていて、この2020年の米国のコロナが最悪な時に偶然世に出た。私はそのタイミングに、まるでみんなのためにじっと存在していたみたい、とロマンを感じてうっとりしていたんだけど、結局最後は人間の醜悪さとか愚かさとかを浮き彫りにする騒動になってしまってがっかり。

 誰かが倒されたモノリスに関するNYタイムズのニュース記事へのコメントで書いてたっけ。

「見かけは輝いていてゴージャスだけど、中身は空っぽ。
まるで何かを象徴しているみたい。」

これってSNSに踊らされている私たちのことかなあ・・・。